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BSR/サナダテ/日曜日の恋人、とタイトルをつけていたものの一部。日曜日を起点に初期化を繰り返す人型ケータイ政宗殿のはなし。
ヒューマノイド型総合電子端末、と呼ばれるものがある。機械的分類上必要なその四角張った呼び名は実際には使われず、専ら人型端末だの、人型ケータイだのと気楽な呼称ばかりだ。専門店のショーウィンドウには人造の美男美女が立ち並び、二人で連れ立って歩く内の片方の肌には、特有の個体識別番号が印字されている事など良くある光景として馴染み始めている。
日曜日、街中は混雑を極めていた。人型端末が台頭するようになってから騒がれ始めた、加速する人口過密の問題について、その片鱗を窺い知れる様相である。
「電話帳まっさらで良いなんて、アンタ友達いねェのか?」
「……まあ、あまり、親しい方はおりませぬゆえ。使い方も詳しくありませぬし、慣れるまで暫くは、」
大学への道すがら、初期設定を終えて間もない政宗は、もう一度確認も込めてそう聞いた。彼の持ち主である幸村は、若干言い淀むようにして頬を掻く。
「大学生だろ、アンタ。ぼっちキャンパスライフとかキツくね?つか大金はたいて俺買ったのに、使いこなせねえってどうよ」
B-01に──政宗にプリインストールされている言語ソフトは、どんな年代の持ち主にも対応出来るようにと膨大な採用語句を誇るという。遺憾なく発揮されているそのソフトの威力に、力なく幸村は笑い掛けた。
「構いませぬ。政宗殿がいらっしゃれば、某は、それで。利便性など二の次ですし」
量産化されているとは言え、未だ高価な人型端末を大学生の身分で買っておいて、利便性は二の次だと言い切れるのも珍しい。政宗は小首を傾げて瞬いて、幸村の顔を見つめる。
「ふぅん。アレか、流行ってっから欲しかったとかそういう感じか?ユキムラは」
ぎこちない呼び声に、幸村はふと、笑った。雑踏の中、音なく微笑むその表情で彼が呟く。
「──ご質問ばかりですな、政宗殿は」
「まあ、データから読み取れねェ事はどうしてもな。アンタの事覚えてやらねえと、俺の実力発揮出来ねんだよ」
政宗の皮膚の内側では、最新鋭の技術が唸りを上げて幸村の事を覚え込んでいる最中だ。まるで人間同士がそうするように、対人会話で持ち主の生活リズムや基本情報などを学習していくのだと、それが人型ケータイの売りのひとつだった。